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sisu とは何か


1937年に出たフィンランド語の百科辞典 (Otavan Iso Tietosanakirja) によると,sisu がフィンランド人の国民性を表すキーワードとして用いられるようになったのは,どうもフィンランドが独立してからのことらしい。このことは,現在 sisu のもつプラスの意味も同じくらいの歴史しかないということになりそうである。

フィンランド語で言う sisu は,どうやら人間ならだれでももっている 「元気」 「根気」 「勇気」 「士気」 などに出てくる精神的なエネルギーとしての 「気」 のようなものと考えるのがいちばんわかりやすい,と私は考えている。

「フィンランド人の sisu」という形で sisu がフィンランド人の国民性を表す特徴であると言われるときは,sisu そのものがフィンランド人特有のものであると言っているのではなく,フィンランド人はこの sisu が世界でいちばん豊かな人々の集まりである,ないしは,この sisu を世界でいちばん上手に操って,スポーツをはじめとして,世界のさまざまな場面で活躍しているのがフィンランド人だということを言っているのだと理解するとわかりやすくなると思われる。

sisu ということばの使い方から分るように, sisu は上手にコントロールすれば,人間が肉体的な限界を克服して偉業を成し遂げる働きをしてくれるが,他方,コントロールを誤ると 「反抗的」 「頑固」 「強情」 「癇癪」 などのネガティブな面が全面に出てしまう。このあたりが Star WarsForce に 「表・善の面」 (light side) と 「裏・悪の面」 (dark side) があるのと似ていないでもない (ただし Force の悪の面を操るのが 「シス」 だというのは,英語の Sith がフィンランド語の sisu とカタカナ表記で同じになってしまうことからくる単なる偶然の一致で,sisuForce の共通点の話とは一応無関係である)。

なお,フィンランドで封切られた Star Wars Episode I では,Force は直訳されて大文字で始まる Voima 「力」 となっている (Olkoon Voima kanssasi!May the Force be with you!) し,[例文30] からもわかるように,もちろん sisuvoima は別ものである。しかし,もしジェダイの合い言葉 「フォースとともに」 (=気張って行けよ) が Olkoon Sisu kanssasi! (「シスが君とともにあれ」) だったら,Star Wars はもっと面白くなったに違いないと私は勝手に思っている。


更新日: 2004/05/12